オトシンネグロの繁殖

執筆 Nov.2010

■ きっかけ
毛フグ(テトラオドン・バイレイ)の繁殖に行き詰まりを感じたので、気分転換に混泳仲間の繁殖を目指すことにしました。 手持ちのフグにはまだ南米淡水フグなどもいて、先人もいないようなのでとても興味はあったんですけど 4匹いる中で2匹は若魚だし、産地の違いか見た目も互いが違うので、今回は見送ることにして後日改めて挑戦することにしました。 。。。ということでオトシンネグロに決定。 これは、水温合わせ失敗ですべて失ったグリーンオトシンへのリベンジでもあります。
写真手前の♀は、混泳相手のアベニーパファに両目を奪われています。奥の♂は同じ理由で左目を失い右目だけですが、このペアで繁殖に成功しました。
ペア
■ 個体選び
オトシンネグロは熱帯魚ショップであれば定番としてオトシンクルス同様最もポピュラーなオトシンです。成体では♀の方が大きく横幅もあります。 さらに付け加えるなら♀よりも♂の方が体色が濃いと思います。
購入の際には、ショップでどのような餌を与えていたか聞いておきましょう。導入の際、餌の違いによる失敗を防ぎます。
ネットを見ると、オトシンは突然落ちてしまう(死んでしまう)という事例があるようです。プレコと同じなのか。あるいは話が混じってるのか? 私は、オトシンが落ち易いというイメージは特に持ち合わせていませんが、購入時は注意した方がいいかも知れません。 体色などにこだわりがない限り状態が良いものを選びましょう。オトシンの場合は、まずは外観。 怪我がなく、やせ過ぎず、腹部が膨らみ過ぎずの体型で、水槽側面や流木やヒーターコードなどに吸い付いている元気な個体がよいです。 底面にいるすべてが調子を落としているわけではありませんが、自分の経験でグリーンオトシンを落とした時は、いずれも側面から底面に生活エリアを変え、やがて落ちました。 人気があってすぐに売切れてしまうという種類でもないので店に入荷してから一週間程度以上経ったものから選んだ方が安心かも知れませんね。 繁殖を狙う場合は♀1に対して♂2がよさそうです。 繁殖行動をみてると♂1では大変そうですし (笑)、相性の問題も回避できる可能性が高まります。
■ 飼育
さて、オトシンネグロ達を家に迎えたらまず自宅の水に合わせる作業をします。水温は当然なのですが水質も慎重に合わせてやった方が良いようです。 オトシンが落ちやすいといわれるところには、水の変化に弱いところがあるのかも知れません。 ところ変われば水変わる。人間でさえその味の違いが分かる訳ですから、小さなカラダには水質変化は大きな負担でしょう。オトシンを新たに導入する場合は、チューブを使って点滴のようにトリートメントタンクからオトシンを入れたプラケースに水を移します。 つまり”お店"の水を自宅の水で薄めて、自宅の水に馴染ませるわけです。 私は普段、2-3滴/秒の速さで行っています。 水をあわせたら次に温度を合わせます。プラケースに適量の水を残して残りは捨てます。 小さいプラケースやガラス瓶に移し換えてこれをトリートメントタンクに浮かべ水合わせの間に変わってしまった水温をもう一度合わせます。 ガラス瓶の場合は30分もあればよいかと思いますが念のためそれぞれの水温を計りましょう。 最後に、オトシンを網で掬ってトリートメントタンクに移動させましょう。 プラケース/ガラス瓶の水は一切混ぜません。 一週間ほどトリートメントタンクで様子をみてみましょう。 この期間、オトシンに異常が見られない限り私は薬を使いません。元気のなくなった個体(淡水フグ)に0.5%の塩水を使ったこともありますが 普段のトリートメントは飼育水と同じです。 一週間、異常がなければ温度合わせをして飼育水槽に移します。 この時私は水合わせを省いてしまうことが多いのですが、もちろん水質合わせを行った方が安心でしょう。 ただ、この時点で特に失敗した経験はありません。 自宅の水槽で水質が大きく異ならない限り(各水槽同じ水換えのタイミングを維持している)神経質な水合わせは必要ないと思います。但し、自己責任で。今回は40cm水槽に♂2♀1を入れました。 環境はナナ付流木の入ったベアタンクでスポンジフィルター、水温28度 (26度で水槽に入れて28度まで加温)。 餌は冷凍赤虫を毎晩少量とプレコ用人工飼料。
♀
■ タンクメイト
繁殖狙いなのでタンクメイトはなし。 オトシンネグロよりも弱いタンクメイトってあまり思い付きません。
■ 繁殖
ペアリングをはじめて一週間は まったく動きはありませんでした。 実はこの3匹、2週間程前に産卵したばかりだったのです。 取り敢えず産卵を促すため、2/3換水してみました。スポンジフィルタはセットしてあまり日が経っていなかったので大量換水に備えて他の水槽で使っていたモノを一時的に入れました。 するとその日の夜から3匹は追いかけっこするように活発に泳ぎはじめ、やがてコリドラスで見られるTポジションとなり受精を行いました。 写真でも判る通り実際はTポジションというよりPポジション!? 体色についてはあまり変化を感じませんでした。
お腹の大きい♀ ♀とお腹から出た卵
■ 孵化
翌日には水槽には 150-200個の卵が産み付けられていましたがどうしたことか1/3は既に白くなっており駄目になっていました。 実はこの現象は3週間前と同じ、なぜか今回も1/3が無精卵でした。 受精卵は透明で、卵の中に何かしらの形が見えます。 そして29度で約1日半、孵化が始まりました。 孵化直後は栄養分がたっぷり入ったヨークサックでお腹がポッコリ、泳ぐことも殆どありません。 孵化2日後にはそのヨークサックの膨らみも消え、早い個体はブラインシュリンプ(*1)を食べるようになりますが、あまり泳げない個体は反対にブラインに集られて死んでしまうこともありえるので2日間ほどベビーフードと呼ばれるパウダー状の餌を与えるとよいでしょう。 与え過ぎると水を汚しますので注意してください。 様子を見ながら少量を頻繁に与えるのが良いかも知れません。 
卵
孵化3日後
ベビーフード
水槽で見つけた卵 無精卵は すでに白くなっています 受精卵 ベビーフード
■ 稚魚飼育
すべてが泳げるようになった孵化3-4日目あたりからブラインシュリンプに切り替えます。 とにかくいっぱい食べます。少量・頻繁を基本に大きく育てましょう。 1カ月経つと大きさも2.5cmぐらいとなり、成長も緩やかになってきます。私は、この時点でプレコの餌との併用を初めました。  その後まもなく、私はすべての稚魚を手放してしまいましたが、成長度合いによってはすぐにプレコ餌と冷凍赤虫という成魚と同じ餌に切換えられると思っています。 オトシンはコケ食いではありますが本来は雑食です。 底モノ用の人工餌ならだいたい食べるようです。
卵
孵化3日後
孵化3日後
孵化 当日目 孵化 2日目 孵化 5日目

卵
孵化3日後
孵化3日後
孵化 10日目 孵化 18日目 孵化 30日目
■ 繁殖水槽環境
- 水槽:40cm
- フィルタ:スポンジフィルター
- 照明:蛍光灯 15W 8h照明
- 水草:アヌビアスナナ付流木
- 底砂:なし
- CO2添加:なし
- エアレーション:常時
■ 混泳(匹)
- なし
■ 餌
- ひかりクレスト プレコ キョーリン社
- 冷凍クリーン赤虫 キョーリン社

- ブラインシュリンプ (*1) ここでいうブラインシュリンプとは自分で卵から孵化させた生きたブラインシュリンプであり冷凍モノではありません。